鬼喜王子です。
円楽師匠が引退されました。
「観客が満足しても、自分の最高の芸を見せられなくて申し訳ない」という旨のことを、仰っていた。
世界的に活躍されるマジシャン、深井広正さんの奥様、キミカさんと話をしたときに、こんなことを言っていた。
「私たちは、毎年毎年同じアクトをやっているけど、去年よりは今年の方がよくなっているよう頑張っている。もしお客さんに『去年の方がよかった』と言われたら、そのときが私たちが舞台を降りるときね」
芸という桜花を美したらしめるためには、それが醜く枯れる前に、自らを散らす厳しさをもたなければならないのだろう。
一流の芸人というのは、それをわかって、なおかつ実行に移せる人間なのだろう。
知人の社長で、最近なにかと「もうすぐ死ぬから」と口癖のようにいう方がいる。
この人は、誰に対しても大変気さくで、本当に気のいいおじいちゃん、という感じのかたなのだが、某一流ホテルにいくと赤絨毯をひかれて、各セクションのマネージャーが次々に挨拶しに来るほどの人である。
多分この人にとっては、人生そのものが芸なのだろう。
引き際を美しくしたい、という気持ちはわからないでもないが、わがままと言われようと、少しでも長生きしてもらいたい。
このような方と出会えたことを、僕はとても誇りに思う。